5年生時代 その⑯ [ソーラン節]

夏休みが終わり、運動会の季節がやって来ました!

子リスの小学校では、5年生の踊りは「ソーラン節」と決まっています。(ちなみに4年生は「鳴子」を使った踊りか、「花笠」を披露します。)

ソーラン節と言っても色々なバージョンがあるらしく、ここ数年の運動会では、ロック調のソーラン節を見ることが多かったような気がします。でも子リス達の学年は、正調…と言って良いのかどうかわかりませんが、とにかくギターやドラムなどの入らない、“基本的な”ソーラン節を踊ることになりました。

この“基本の”ソーラン節。どうやら、子リスにはピンと来るものがあったようなのです。いつにも増して、家での練習に真剣さがみられました。

そして、運動会当日です。
黒のTシャツに豆絞りのねじり鉢巻きで揃えた5年生約160人が、大漁旗のはためく中、踊り始めました。船をこぐ、網を引く、網を上げる、捕れた魚を掬って放る、汗を拭く…などの動作も、5年生ともなると、落ち着きがあってなかなかの見ごたえですが、その中でもひときわ上手に、本格的に踊っている子がちらほら見えます。
子リスもなんと、その一人なのでした。

私はフシギで仕方がありません。
だって、人から見られるのが嫌、というのが、そもそも「喋れなかった」原因なわけで…。(曲がりなりにも)喋れるようになってからだって、できるだけ前に出ることはしたくない、目立ちたくない、色んなことをしていることを、他の人から見られたくない…と毎日思いながら生活している筈なのに。こんなに上手に、真剣に踊ったら、注目されちゃうんだけどな。

…聞いてみたい。「ねえ、こういうのを見られるのは、嫌じゃないの?」

でもそんなことを聞いたら、色々なことがダイナシになるので、当時は勿論聞きませんでした。そして私なりに考えたのは、
「きっとこの場合、こういう踊りが好き、という気持ちが、見られたくない気持ちに勝っていたんだろう」ということでした。

それから何年も経った今、ビデオに映る「ソーラン節」を踊る自分の姿を見ながら、子リスが言います。
「こういうのは、やるんだよねー。どういうことなんだろうね。まあ、好きだったんだろうね。」

つくづく、人間って、好き、嫌いで動いている動物なのだなと思います。そして、好きなものや好きなことがあるということは、すなわち生きる力になるのだな、とも思います。

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