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鉄壁のおっぱい

病院も手術の日取りも決まり、私達はようやく一息つくことが出来ましたが、考えてみればそこまでが随分、長い道のりでした。
病院で受ける色々な検査で、授乳中ということを考慮してもらうのも、思いの外手間が掛かることでした。胃カメラやCT,MRIなどの検査には薬を使うため、その度に、授乳中であることをお医者さんや検査技師に伝えます。すると、その薬が母乳にどれぐらいの影響があるかという判断が、どうもはっきりしないのです。
(お母さんが薬を飲むと、それは微量であっても必ず母乳の中に出るのだそうです。ただし、それで授乳を止めなければならない程の影響を持つ薬は限られていて、授乳を続けるメリットの方が大きい場合が多い、ということも、ラ・レーチェ・リーグで学びました。)
結局、危険性の程度などを示してもらえないまま、「授乳中ねえ…取り敢えずしばらく母乳は止めて。」と言われて困ることもありました。おっぱいを何日か止めるということは、おっぱいにとっても、子どもにとっても、そう単純なことではないのです。「取り敢えずしばらく」なんてカンタンに言ってくれるな、という気持ちでした。それで私は、友人で助産師のアカネちゃん(そう、私に母乳育児をスタートさせてくれた彼女です。)に電話をして指示を仰ぎました。彼女の先生が、母乳の専門家なのです。そして、どうしても使わなければならない薬以外は使わない、母乳に出る薬の分量が心配ないとされる時(実際、殆どの場合、授乳を続けても差し支えないと言われました。)は授乳を続ける、というやり方で色々な検査を受けました。

MRIを受けた時のことは忘れられません。この時は2回目のMRIで、血管から造影剤を入れての検査でした。造影剤を注射されても気分が悪くなったりもせず、無事に検査が終わりました。ところが、家に帰ってしばらくした時、急に胸のあたりに違和感を感じたのです。少し痒みもあります。服を上げて見てみると、何と、胸の部分に一面、うす赤い発疹が出ているのです。しかもよく見ると発疹は、おっぱいの形に広がっています。「なにこれ!」と私はビックリして、近くの皮膚科に駆け込みました。皮膚科の先生は首を捻り、「何だろうね。考えられるのは造影剤アレルギーだけど、飲み薬を飲んで、明日まで様子を見ましょう」。
そして次の朝、おそるおそるパジャマをめくって胸を見てみると…何と、昨日よりくっきりと、おっぱいの形に、濃い赤色が出ているのです。(つまりビキニの日焼け跡の逆の状態です)皮膚科に行くと、「ほぼ間違いなく造影剤の影響でしょう。」ということでした。授乳は続けてよいといわれたので、子リスにおっぱいを飲ませましたが、子リスが赤いパイパイにびっくりするといけないので、服で胸を隠して、見せないようにしておっぱいをあげました。

これは私の勝手な解釈ですが、おっぱいは必死に、子リスが飲む母乳を造影剤から守ったのではないでしょうか。だって、本当におっぱいのところだけが真っ赤になったのです。事実、おっぱいが異物をろ過する力は、例えば胎盤のそれと比べてもずっと強く、赤ちゃんが飲む命の素を守る、超高性能フィルターの役割をするのだそうです。すごい、鉄壁パイパイ!