”家ではお喋りなのに学校(幼稚園)では全く話さない!”
というお子さんのお母さん・お父さんへ

子リスは「場面緘黙症」

我が家の息子(ここでは「子リス」という名前です)も、まさにそういう子供でした。
家にいる時の子リスは、とても元気でお調子者で、時々「ちょっと黙っててくれる?」と言わずにはいられない程おしゃべり。ところが、一旦学校に行くと、子リスは一言も喋らなくなってしまう。また、学校に限らず、家族・親族以外の誰とも、声を出して話をすることはない。…そういう状態が、幼稚園から小学校4年生まで続きました。
こんな風に、子供が、学校や幼稚園など特定の場所・状況では全く(または殆ど)喋らない状態が続く時、その子供は「場面(選択性)緘黙症」である可能性があります。
場面緘黙症とは、言語や知能の発達に問題はなく、家では普通に家族と話をするのに、特定の状況(場所・相手・活動内容など)においては話せない、という症状を言います。場面緘黙症は、話すことへの不安・恐怖が引き起こす症状で、恐怖症の一種だという見方もあります。発症は2歳から5歳ぐらいとされていますが、殆どの場合、始めはただ「おとなしい」だけだと思われるために、親や周りが「これは問題だ」と感じて相談所や病院に行き始めるのは、小学校入学以降が多いようです。
(詳しくは 「場面緘黙症とは…?」へ)

「場面緘黙症」という言葉との出会い

我が家の子リスの場合も、「他の人と話さないなあ」と気付いたのは、幼稚園に入園した4 歳の頃でしたが、やはり「そのうち何とかなるだろう」と様子を見ながら、約2年過ごしました。そして子リスは小学校に入学。「小学校入学がきっかけで…」という淡い期待は裏切られ、数ヶ月経っても一向に喋り出さない子リスを見て初めて、さすがにこれは何か問題があるのではないか…と不安が心を掠めた頃、前に幼稚園の先生をしていたことがある友達が、「子リス君と同じ様な子供を受け持ったことがありますよ。確か、『場面緘黙』っていうんですよね。」と言って、子リスと全く同じ状態の子供の話を聞かせてくれたのです。
「バメンカンモク?」私が始めて聞く言葉でした。
それから私は、この「場面緘黙症」というものについて、本やインターネットで調べたり、いろいろな人に相談したり…ということを、遅ればせながら始めたのです。

このサイトを開設したのは…

調べ始めてすぐに、場面緘黙症は日本では認知度がとても低く、児童心理の専門家や教育関係者の中にも、詳しい人は多くはいないということがわかりました。でも、子リスと同じ問題を抱えている子どもは日本にも沢山いる筈で(場面緘黙症の発症率は1000人に2~3人と言われています)、その親御さん達は、私と同じように「そのうち何とか…」と不安を抱きつつ過ごしていたり、少ない情報量の中で途方に暮れているかも知れません。
インターネットには、場面緘黙症についてとても詳しく書かれていて、多方面の情報を得ることの出来るサイトもあります。また書籍としては、今のところ日本語で手に入るものはあまり多くはないのですが、場面緘黙症の研究が進んでいるアメリカやカナダでは、緘黙症に関する多くの書物が出版されています。その中の一冊が、前出の友人が私に貸してくれた、
Helping Your Child with Selective Mutism (2005) という本です。(★)
これはカナダの子ども病院のお医者さんと精神医療スタッフによって書かれた本で、場面緘黙症とはどういうものか、原因は?学校や家庭でどのように対処するべきか、などについて、分かり易く解説してあります。、私が子リスの問題について勉強し始めた時に、場面緘黙症というものを理解し、それにどう取り組むかの指針を立てる上で、まさに羅針盤の役割を果たしてくれた本でした。
 
★この本に関してはその後、待望の日本語訳版が出版されています。
「場面緘黙児への支援 学校で話せない子を助けるために」 (田研出版 2007年)

子リスが小学校一年生の時、学校の担任の先生と、市のカウンセラーの方と私との3人で、この本をガイドブックとして、面談を行いました。そして、子リスが学校でリラックスし、「話せない」という問題から抜け出せるための策を練り、少しずつ実践し始めました。何が特効薬なのかわからず、まさに手探り状態でしたが、私達の日々の小さな取り組みが、子リスが自分の中に持っている「伸びる力」で問題を乗り越えて行く手助けになれば…と願いながら、子リスを見守る日々が続きました。そして、少しずつ、本当に少しずつ、子リスは変わって行きました。

このサイトを開設した当時は、取り組みが始まったばかりでした。私達の試行錯誤と子リスの成長の記録を残したいという思いからでしたが、同時に、同じ悩みを持つ親御さん達との出会いも期待していました。有難いことに、沢山の方からコメントやメールをいただき、悩みを共有したり、励まし合ったりすることが出来たのでしたが、その後私が体調を崩したのをきっかけに、6年間ブログを休止することになってしまいました。

その間、ブログは止まっていましたが、当然子リスは成長し続け、様々なことがありました。
子リスは今、緘黙症を乗り越えて、友達や先生と話せるようになっています。
過去のブログを読み返したり、これまでのことを振り返ると、子リス自身は本当によく頑張り、時にはよく耐えて、日々を過ごして来たんだなあ…と、何とも言えない気持ちになります。でも、子リスがここまで来ることが出来たのは、学校の先生方や友達、周りの沢山の人達の支えがあったからに他なりません。そのことを改めて思った時、やはりこれまでのことをきちんと整理し、残しておかなければいけない、という思いに駆られ、2012年2月、ようやくブログを再開することになりました。
主に6年間を振り返る形でのブログになりますが、今だからわかることや、新しい気づきも多々あります。私達の歩みの中に、何か一つでも、今緘黙症に取り組んでいらっしゃる方の参考になることがあれば、それは私にとって何よりの喜びです。また私自身が、記録を綴りつつ今を考えることで、欲張りで自分勝手な親心を省みて初心に返り、思春期を迎えた子リスを、強く優しく支えられる親になれたら…という願いもあります。

子育ての話

このサイトを開設する準備をしながら、ふと思ったことがありました。子リスの場面緘黙症について相談に行ったり、考えたり、勉強したりしているうちに、それなりに知識が増え、様々な場面で意識して対処するようになりました。でも、ちょっと待って。「緘黙症」ということに必要以上に囚われてしまうのは、子リスという人格に対して失礼なのじゃないかしら。子リスは確かに「場面緘黙症」らしい。でも、それは子リスのほんの一部分でしかない。という、ごく当たり前のことを思い出したのです。
子リスが生まれて(2000年生まれです)から今までの間には、当然いろいろなことがありましたし、子リスの性格にも、飛び出たところと凹んだところがあって、大変なことと、楽しいことの両方を私達にくれています。そんな子リスをこれまで育てて来た中で、もしかしたら共感して下さる方もいらっしゃるのではないかと思うことについても少しお話してみたいと思いました。私にとって子リス育ては、これ抜きには語れない!という「おっぱいの話」と、「スピリッツ・チャイルドの話」です。