1年生時代 その⑲ 遠足
 ~心の準備はないほうがいいこともある。~

先週、子リスたち一年生の遠足がありました。子リスは風邪を引いて前々日まで熱があり、参加出来なかったらどうしよう…と私は心配していたのですが、子リスは遠足に行きたい一心で熱を下げ、元気に出かけて行きました。だって行き先は、動物園なのです…。

実は子リスは、動物マニアです。周りの話を聞くと、どうやら男の子は、いろいろなものに関してマニアックになる傾向があるようです。その対象は電車だったり車だったり、虫だったり…と様々なようですが、子リスの場合は動物です。年に3回~4回は動物園・水族館に連れて行かされますが、一旦入園したら最後、「鳥はオモシロクないからとばして、早くパンダやゾウを見に行こうよ~」なんていうことは許されません。子リスは全ての動物を一つ残らず、じ~っくり見て回るのです。だから結局いつも、開園時間から閉園時間までいることになり、帰る頃には親はヘトヘト、子リスは何故かまだ元気で、「あんな動物がいたね~」と喋りまくっている、という状態です。
だから、遠足の行き先が動物園と知った時の子リスの喜び様は、タイヘンなものでした。しかも、そこは子リスがまだ一度も行ったことのない動物園です。

ところで、その動物園には、子リスが苦手な動物がいます。それは…

マンドリル。

鼻がピンクで頬が水色の、ユニークな顔をしたあのサルです。子リスは2歳の時に初めてそれを見て「こわい~!」と泣いて以来、マンドリルだけは見ることができないのです。

実は私は、今回子リスたちが行く動物公園にマンドリルがいることを、前から知っていました。でも子リスには内緒にしておきました。だってそんなことを言ったら、例によってその日から毎日、
「マンドリルのオリのところはどうする?」「目をつむったらあるけないよ」「見ないようにしても、鳴き声が聞こえたらどうする?」「マンドリルがどこにいるかわからないのに、いつ目をつむったらいいの?」
とか何とか、私の後を追いかけながら心配し続けるに決まっているからです。それではせっかくの、遠足が楽しみな気分が台無しになってしまいます。(それに何より、私が疲れます…。)

どうなったかな?と思いながら待っていると、子リスが元気に帰って来ました。開口一番、
子リス:「ママー、マンドリルがいた!」
私:  「えーっ、ウソー。」
私はあくまで知らない振り。

私:  「子リス、マンドリル見たの?」
子リス:「うん。だってA先生、止まっちゃうんだもん。」
私:  「え?」
子リス:「先生、『うわ~、すごいかお!』って言って、ずーっと見てるんだもん。A先生が先頭だから、ボクたちも止まってるでしょ、マンドリルの前で。仕方ないから、みたよ、マンドリル。」
と子リスは照れ笑いをしていました。

その時の状況を想像したら、笑ってしまいました。
A先生がマンドリルの顔に感心して「動かなくなっちゃった」お陰で、子リスは再びマンドリルを見ることが出来るようになった訳です。童心に帰って下さった(?)A先生に感謝です!

今回は「マンドリルを見る」という、かなり特殊なことでしたが、もっと日常的なことに関しても、逃げ場がなかったので出来てしまった、ということが時々、あります。
話すことに限らず、これから起こる色々なことに対して不安や恐怖を持ちやすいのは、場面緘黙症の特徴の一つと言われているようですが、子リスもまさにそういう性格です。
子リスがもっと小さい時は、予想外のことが起こるとすぐにパニック状態になっていました。だからそれを避けるために、いつもと違うことをする時は特に、これからの成り行きを予め言い聞かせ、心の準備をさせていました。でも少しずつ大きくなって来るに従って、これから起こることを前もって知ることで、かえって想像が膨らみ、不安が増してしまうことが多くなって来たのです。そして逆に、不安を感じるヒマがなくてうまく行った、という経験が増えて来ました。

心の準備をさせる時と、敢えて何も教えずに場面に飛び込ませる時。きっと状況によって、両方必要なことなのだと思います。でもどちらにしても、結局は本人の「よしっ」という気持ち一つなのだろうと思うと、親としても、“陰ながら”応援するしかないので、せめて、出来ても出来なくても受け止めてやれる気持ちだけ、持っていたいなあ…と思います。

4 COMMENTS

Oママ

こんにちは。
子リスくん、マンドリル克服?おめでとうございます。
幼稚園と違って、学校は親の見えないことだらけなので、『不測の事態』は山ほどあるでしょうね。
それを自分の力でひとつずつ乗り越えていくんだから、親は感動です。

動物園のマンドリルの前での子リスくんの顔を思い浮かべて、ちょっと笑ってしまいました。

星座も教えてくださって、ありがとうございました。
テレビの占いで、自分のはもちろんですけど、子リスくんの運勢も見ながら、今日も一喜一憂しているOです。

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おかあさんリス

Oママさんへ
ありがとうございます!マンドリル克服は4年越しの夢(??)だったので、感無量です。
そう、まさに学校生活は『不測の事態』の連続ですよね。そのうちに本人が、“世の中ってぜ~んぶ、思いもよらないことだらけなんだ…”と思って開き直る日が来るといいなあ、と思っています。これは私自身にも言えることなのですが。
Oちゃん、子リスの星座占いも見てくれてるんですね。嬉しいです!!Oちゃんが「星座は何?」と聞いてくれた時、子リスは恥ずかしくて自分で答えることが出来ませんでしたが、直接聞いてもらえたことがとても嬉しかったようです。これからもよろしくお願いします!

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mocha

初めまして。娘(年長)の事が気になり、検索し
「場面緘黙症」を知り、こちらへ辿り着きました。
Topの”家ではお喋りなのに学校(幼稚園)では全く話さない!”
で確信出来ました。まさに娘です。来春、入学を控えているので
その前に少しでも娘にとって何か出来ればと思いました。
まずは市の保健センター等に相談してみようと思います。
もっと早く動いてあげれば…と後悔も多少ありますが
今の段階で気付いて良かったと思い、気持ちも改めます。
おかあさんリスさん、これからも色々教えて下さい。
どうぞ宜しくお願いします。

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おかあさんリス

mochaさんへ
コメントありがとうございます!このサイトを訪ねて下さったこと、そしてご連絡を下さったこと、とても嬉しいです。
私も、初めて「場面緘黙症」という言葉を知ってからしばらくは、「2年間も放っておいてしまった」「今まで知らずにいたなんて…」と後悔に苛まれていましたが、その後、特殊教育の専門家である友人から、「放っておいたと言うけれど、それは子どもからすれば、お母さんがゆったりと構えていたことにもなるのだから、それはむしろよいことだった」と言われ、救われました。
いきなり病院ではなくて保健センター(とか児童相談所など)に相談することから始めるのは、とてもよいことだと私は思います。治療機関(クリニックなど)に連れて行くのは、その子どもの症状や段階・それから気質によって、必要な場合と、逆の場合とがあるらしいということを、この数ヶ月で学んだからです。
場面緘黙症の専門家を探すというよりは(実際これは難しいことですし)、娘さんの状態を正確に把握して、親身になって相談に乗ってくれる人を探すことがまずは大事だと思います。
こちらこそ、これから宜しくお願いします!また是非、様子を知らせて下さい。コメントでも、メールでもどちらでも大歓迎です!

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