場面緘黙症への具体的な取り組みや日々の出来事は「歩み」へ

場面緘黙症とは…?

Helping Your Child with Selective Mutismなどいくつかのの資料を読んで、今までに私が理解した内容をまとめたものです。現在も勉強中ですので、随時内容を追加して行きます。

場面緘黙症をよく理解するために、下記のサイトをご覧になることをお勧めします。

場面緘黙症Journal …場面緘黙症について多方面から情報が得られるサイトです。

場面緘黙症とは何か?

場面緘黙症とは、言語や知能の発達に問題はないが、特定の状況(場所・相手・活動内容など)においては話せない、という症状を言います。場面緘黙症の子どもの殆どは、家では家族と普通に話をしますが、学校や幼稚園などでは全く喋らない、喋ったとしても小声で、ごく限られた相手とだけ話す、という状態になります。
場面緘黙症は、話すことに対する不安や恐怖心が引き起こす、心理的な障害です。場面緘黙症の子どもにとっての恐怖とは、「話すことを期待される、ある決まった状況・場所において、自分が話しているところを聞かれる、または見られることに対する恐れ」であり、場面緘黙症を恐怖症の一種ととらえる研究者も多くいるようです。広汎性発達障害や学習障害・自閉症・アスペルガーなどとは異なりますが、これらの障害を併せ持つ子どももいます。

以前は、子どもが自ら「話さない」ことを選択していると考えられていたために、頑固だ、とか、反抗的だ、という見方をされることが多かったようですが、後に、彼らは「話さない」のではなく、不安や恐怖心から、「話せない」のだということがわかってきました。

場面緘黙症の特徴

  1. 場面緘黙症の子どもの多くは、家では家族や慣れ親しんだ人たちと、ごく普通に話をします。実際、彼らは家では非常にお喋りであることが多いようです。
  2. 幼稚園や学校などにいる時多くの緘黙児は、無表情で、人との交流や一斉活動を避けようとします。また、体が硬直してしまう様なこともあります。
  3. 一方、学校などで一言も話さないにも拘らず、集団を避けようとせず、むしろ集団の中にいることを楽しんでいる場面緘黙症児も多くいます。自分から積極的に友達の輪に入っていこうとはしませんが、傍らから眺めて楽しそうににこにこしていたり、あるいは、実際に遊びに参加したりすることもあります。さらに、ジェスチャーや指差し、頷き、顔の表情など、非言語的手段を用いて、コミュニケーションを図ることもします。学校に行くのを嫌がることがあまりないのも特徴です。(但し、いじめなどの問題がある場合は別です。)
  4. 場面緘黙症の子どもの多くは、話せないこと以外に、何らかの心理的な症状を抱えていることが多いようです。学校でトイレに行けない、給食などが食べられない、などの問題があります。
  5. その他に、知的好奇心が旺盛・感性が豊か・執着傾向がある・完璧主義である、などの特徴がみられることも多いようです。

場面緘黙症の発症時期と診断時期

場面緘黙症の発症は2歳から5歳ぐらいと言われていますが、実際に診断されたり、治療が開始されるのは6歳から8歳、つまり小学校入学後が多いようです。ここに時間のギャップがあるのは、場面緘黙症というものがあまり知られていない障害で、親も、周囲の人たちも、また専門家も、子どもが幼稚園などで話さないことを、単なる内気さや、時が経って成長すれば解決する一時的なものとして過ごしてしまうためと考えられます。
「特定の状況で話せない」状態が、一ヶ月以上続く場合、場面緘黙症であるかどうかの診断の対象になります。

場面緘黙症の発症率は?

1000人に2~3人、という見方もあれば、100人に2人ぐらいにのぼるという見方もあります。女児の方が、男児より発症率が高いようです。

場面緘黙症はなぜ起こるか?

場面緘黙症の原因については、はっきりとはわかっていませんが、場面緘黙症の発症に関わる可能性として、本人の気質や家族の気質(遺伝的要素)、言語障害、新しい環境や文化への適応の問題、家族以外の人間と関わる頻度など、いくつかの要因が挙げられています。ただし、場面緘黙症の発症には、複数の要素が絡み、子どもが元来持ち合わせた気質とあいまって起こると考えられています。幼児期のトラウマや家族の機能不全といったことは、以前は場面緘黙症の主な原因として挙げられてきましたが、現在は、それらが原因であることを示す根拠はないとされています。

場面緘黙症はどれぐらいで治るか?

これについても、資料によって見方が分かれているようです。Helping Your Child with Selective Mutismには、適切な治療法を用いることによって、場面緘黙症を1~2年で抜け出す子どももおり、むしろ長期に亘って症状が続くことの方が少ないと書いてあります。
また、場面緘黙症は自然に治るのかという疑問に関しても、専門家によって少しづつ回答が違うようです。特別なことを何もしなくても、自然に治る場合もある、という見解もありますし、場面緘黙症が、放っておいて治ることはまずない、と結論づけている専門家もいます。
ただ、いずれにしても心に留めておかなければならないのは、場面緘黙症を放置、または間違った方法で対処し続けることにとって、症状が小学校、中学校、高校、更には成人後まで続く恐れがある、ということです。早期発見、早期介入がとても大切で、治療開始は早ければ早いほどよい、というのは事実のようです。

どのような治療法があるか?

  1. 専門家の下での治療では、下記の療法が一般的です。

    行動療法:
    行動療法とは、人間の様々な問題行動(特に不適応)は学習されたものであるという見地から、その問題行動を学習によって解消していこうとするものです。場面緘黙症の治療では、系統的脱感作と呼ばれる手法などが用いられます。
    (系統的脱感作:まず、不安の程度が低い状況から高い状況までを想定し、不安階層表というものを作ります。そして、十分にリラックスした状態で、最も不安の低い状況を思い浮かべることを繰り返します。繰り返すことで不安は軽減されていきます。不安が低くなったら、次に不安程度が低い状況を思い浮かべます。こうして心の中の不安が解消されたら、今度は不安程度の低い状況から、実際の場面で挑戦していきます。このようにして段階を踏みながら、少しずつ不安を軽減していく療法です。)認知行動療法:基本的な理念は行動療法と共通しています。特徴としては、行動療法が外に現れた行動の改善を重視するのに対して、認知行動療法は、行動を引き起こしている、不安などの内的要因も治療することを目指します。これは、内的な問題(不安や自己否定など)についてセラピストと共に考え、考え方のパターンを変えていくという過程を必要とするため、子どもの年齢や性格によって、適する場合とそうでない場合があると言えます。薬物療法:ケースによっては、薬を使うことが効果的であることもあります。この場合、薬物療法と、行動療法やカウンセリングなどの他の療法を組み合わせて行うことになります。使われる薬物は、セロトニン再取り込み阻害剤などが一般的です。その他:遊戯療法・絵画療法などの心理療法があります。
  2. 上記の様な治療をすすめると同時に、肝心の学校においても、行われるべき大切なことがあります。まず必要なのは、親と学校の先生、そして専門家が連携し、チームとして緘黙児に関わる体制を作ることです。そして場面緘黙症についての理解を深め、目的を明確にして治療にあたることが重要です。場面緘黙黙症の子どもにとって、最も話をしにくい場所は学校であることが殆どです。つまり、彼らにとっては、学校が最も緊張する状況であるということです。場面緘黙症は不安が引き起こす障害ですから、目指すべきことは、この不安や恐怖を取り除き、自信をつけさせて、環境に適応できるように導くことです。「話すこと」ばかりに注目し、それを治療の目的にしてしまうのは不適切なアプローチです。子どもの、学校での不安をなくして行くためには、少しずつ段階を踏ませることが大切です。学校内で、どこにいて、誰と、何をしている時に一番リラックス出来るかを考え、そこからスタートして、次第に他の場所・他の人・他の活動でもリラックス出来るようにしていきます。例えば、放課後や早朝などに親が学校に行き、校庭などで子どもの好きな遊びをする、などということから始めることが出来ます。そこでリラックスして子どもが少しでも話し出せば、その一つ一つが子どもの自信になって行くわけです。教室では、場面緘黙症の子どもがリラックス出来る位置(教室の後方でドアから遠い席)に席をおくこと・一緒にいてリラックス出来る友達を隣に座らせること・質問をする時は、反応しやすい形ですること、などの工夫が必要です。

どこに相談に行ったらいいか?

<診断について>
子どもが場面緘黙症であるかどうか、「診断」をしてくれるのは、子どものメンタルヘルスを扱うクリニックなどが主な場所になると思います。
子リスの場合は、そのようなクリニックに連れて行こうかと考え始めた矢先、市の家庭児童相談員さんを紹介して下さる方がいて、まずその方に私だけが会いに行きました。そして、今までの経過や現状などをお話しした後、何度か面談をしていただいているところです。(その方と私だけ・または学校の担任の先生も一緒に)
場面緘黙症の子どもの様子は一人一人違っていて、子リスのように全く(家族以外の)誰とも話さない子どもも、特定の数人とだけは話す子どもも含まれているようです。子リスの場合は、お友達とも一言も喋ったことがないのですが、それでも、お友達の輪の中にいるのは大好きなようです。
「場面緘黙症」というくくりに入る・入らないということよりも、「集団生活を送る上で困難があったり、それによって子どもが萎縮したり悩んだりしているかどうか」、ということ自体に取り組むことが大切かもしれません。

小児科の先生で、場面緘黙症について詳しい人を探すのは結構難しいようです。場面緘黙症は「情緒障害」にあたるため、それを治療対象とするのは、子どもも扱っている心療内科などが中心です。
ただ、そうは言っても日本ではまだ、心療内科でさえ、「場面緘黙症」はあまりよく知られているものとは言えないようなのです。
そういう現状の中では、どこに相談に行くかを決めるのは、とても難しい選択だと思います。私としては、児童相談所や、市・町・村の保健センターのようなところから始めるのがいいのではないか、と思っています。病院での治療が必要でない場合もありますので…。

それにしても、「偶然」初めに相談に行った所・出会った人の方針に従って治療が進められていくことが多いとしたら、親としては心許ない現状です。

<治療について>
大きく分けて、場面緘黙症の治療には、2種類の流れがあると、私は理解しています。
一つは、メンタルクリニックなどの、専門治療機関に通い、セラピーを受けること。低学年の子どもの場合は、遊戯療法や絵画療法が中心となるようです。
もう一つは、学校と親との連携で、学校で出来るいろいろな工夫を重ねることで治療していくこと。
子リスに対しては今、後者のアプローチを取っています。(本人は何も知りませんが。)例えば、担任の先生と私が、毎月面談を持ち、様子を報告しあう・クラスの中の座席の位置を工夫してもらう・算数の時間、言葉での発表は出来ないので、黒板に答えを書かせてもらう、などのことをしています。いずれにしても、先生に「場面緘黙症」をよく理解してもらい、協力してもらうことが不可欠です。
また、いま2つの流れがあると書きましたが、これを組み合わせることも勿論、あります。
それから、いわゆる治療機関ではないけれど、「ことばの学級」という、通級制度を利用することも出来ます。

<まずは>
1、担任の先生に、場面緘黙症の可能性を話し、理解を得ること。それには、場面緘黙症についてまとめた資料があると便利です。場面緘黙症Journalというサイトがあるのですが、ご存知でしょうか?そちらを管理していらっしゃる方と、有志の方々で作成した資料がとても分かり易く、おすすめです。その資料は現在No.1からNo.7まであって、全てプリントアウトできます。私は全部プリントアウトして、担任の先生と、市の家庭児童相談員さんに渡しています。
特に、学校配布用としてまとめてあるのは、No.3です。

2.児童相談所や保健所などに相談に行くこと。

の2つが大事ではないかと思います。