高校時代 その⑤ 試練 [1年生]

応援部に入ったことで、子リスの高校生活は思いもよらない方向に展開しはじめました。

学ランを用意したり、ヨーロピアンシューズと呼ばれる、先のとがった革靴を買ったり、応援部の独特の言葉遣いや先輩に対する礼儀、部内でのルールを覚えたり…と、新鮮なこと尽くしでした。

でも、そういうワクワクする要素が沢山ある一方で、練習の大変さはやはり並大抵のものではなく、次第に体力・気力ともに限界に近づいている様子が見えてきました。そして、部活が気持ちの負担となって、寝ても覚めてもその事で頭が一杯、といった状態は夏休みに入る直前にピークを迎え、気が付けば子リスの顔からは笑顔が消えていました。
まさに“試練の時”です。中学校の“居心地の悪かった部活”とは、全く違った種類の試練です。

夏休みが始まって間もないある日、久しぶりに家族4人で車で出掛けました。
後ろの座席に座った子リスが言います。

「今度、また1人部活辞めるんだ」

「そうなんだ…」

「こんな状態で、やっていけるのかな」

「どうしたいの?」

「…」

「子リスも辞めたいって思ってるの?」

「やめたって…行くところもないんだよ。ここで投げ出したって、他のところに行って頑張ろう、と思えるわけじゃない」

やめても行くところがない?
本当はそんなことはない筈です。余程の事情がない限り、部活動が(実質)強制参加だった中学校とは違い、いわゆる「帰宅部」だって許されています。
「やめても行くところがない」と言った子リスの言葉の中には、本当はここで頑張りたいのに…という気持ちがあるのだろうと思いました。応援部は子リスにとって、たとえ「魔が差して」入ったにせよ、大きく変わるチャンスであったはず。そんな特別なチャンスを、ここで捨てしまうことは出来なかったのではないかと思います。気持ちを他に向ける気になんてなれない、ということだったのでしょう。

他に行く気にはなれない。でも心身ともに大分打たれた感じで・・・そんな状態のまま、7月末、子リスは初めての夏合宿に出かけて行きました。

ダイジョウブかなあ…

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