3年生時代 その⑤ 友達と遊ぶ (家の中)

 Ray君は、以前「お調子者」として紹介した、子リスのクラスメートです。先生の配慮も(おそらく)あって、1年、2年に続き、3年生も同じクラスでした。
 昨年2年生になった4月、クラスで年度初めの自己紹介をした時には、先生がRay君に、子リスの紹介もしてくれるように頼み、Ray君は自分のことを話した後に、子リスが書いたメモを見ながら、こんな風に「他己紹介」をしてくれたそうです。


「えーと、名前は子リスです。好きな教科は体育で、好きな食べ物はラーメンです。よろしくお願いします。」
 (先生からこの話を聞いて、後日Ray君のお母さんに会った時にお礼を言ったところ、
「えっ!大丈夫?Rayはちゃんとやったのかなあ。勝手に『オレが思うにはねー、子リスはカレーライスが好きだね』とか言ってない?」との言葉。Ray君のお母さんのそんな楽しいところに、私は何度も救われたものでした。)
 また、子リスが給食のお箸を持って行くのを忘れた時には、Ray君は一緒に職員室にお箸を借りに行ってくれて、更に、そこで教頭先生に厳しく言われたことに、子リスの代わりに憤慨してくれたりもしました。(2年生:お箸事件)
 いろいろな場面で随分とお世話になったRay君なのですが、面倒なことを嫌がりもせず、むしろ楽しんで子リスの手助けをしてくれていたように見えました。本当にありがたいことでした。3年生になってもそれは変わりませんでした。

 Ray君が、他の友達と一緒に家に遊びに来てくれたことがありました。
 台所仕事をしながらちらちら様子をみていると、基本的に、Ray君達が話しかけ、子リスは頷いたり首を振ったりして答える、というコミュニケーションが中心になってます。ちょっと複雑な質問になると、こんな感じです。

「ねえ、子リスって、8歳の誕生日に何もらったの?」
(子リス、ニコニコと首をかしげる)
「もしかしてDS?」
(首を横にふる)(ニヤニヤ)
「プラレール?」
(また首をふる)(ニヤニヤ)
「わかった!ポケモン図鑑!」
(またまた首をふる、でも惜しい!という顔)
「えー何?教えて」
などと聞いてきます。私は、なるべく子リスに答えさせたいので、
「ポケモン図鑑は近いよね?」などと子リスに話を“ふり”ます。子リスはいわゆる“口パク”で
「ポ、ケ、モ、ン、の、ボ、ー、ド、ゲ、ー、ム」と答えます。するとR君、
「えっ?ボードゲーム?オレ今わかった!いーなあ。見せて見せて!」

そして皆でボードゲームをすることになりました。

 私はそんな様子を見ながら、「やっぱり声は出ないなあ…。」「このまま声が出ない形が定着してしうんじゃないかなあ…」と密かなため息が出てしまうのでしたが…
 でも子リスは、声は出していなくても、終始ニコニコして楽しそうなのです。そんな子リスを見て、私はちょっと不思議に思ったことを覚えています。私だったら、自分だけ全然喋っていないことで委縮してしまい、楽しむどころではないのではないか。みんなと同じ状態でないことの劣等感で、一刻も早くこの時が終わって欲しいと思うのではないか。そんなことを想像しながら、嬉しそうな子リスを、再発見する気持ちで見ていたものでした。
 友達が帰った後は、「さて」といった感じで自分の「プロジェクト」に取り掛かかる子リスでしたが、何となくいつもとは違った雰囲気に見えました。さっきまでのことを思い出しているのかなあ。友達と遊べた満足感を感じているのかなあ。子リスの心の中を覗くことは出来ませんが、どことなく心が躍っているような様子に、私には見えました。

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