5年生時代 その① 始業式の朝

新年度の始まる始業式の日、子リスにとって5回目の、「マンションロビーでの、登校班自己紹介の朝」がやって来ました。

去年は、長い長い(と感じた)沈黙の後、結局声が出ることはなく、うなだれて出かけて行った子リスの後姿を見送った後、部屋に戻ってわんわん泣いてしまった私でしたが、今年は「どうであっても動揺しないでいよう」と決めていました。

たとえピアニッシッシモ(ppp)の声量であろうとも、学校で声が出たのです。つまり大きな大きな進歩があったのです。
ステップを登っていることがついに目に見えて来たのだから、今更一つ一つの「できた、できない」にこだわる必要はない。これからも「スモール・ステップ」は続いて行くのだと、まずは私がしっかり思うことが大事だと、自分に言い聞かせていました。

いつも通りの時間に起きて、朝ごはんを食べて、身支度をして、ランドセルを背負って。
そして私と一緒にエレベーターに乗ってロビーに向かう子リスは、“普段よりも普段通り”振舞っているように見えました。こ
れは、“今年は大丈夫だもん”ということなんだろうから、ヨケイなことは言わない方がよさそうです。

果たして、子リスは今年、初めて自分の口で自己紹介をしました。
「5年1組、子リスです。よろしくお願いします」
やった…!これが聞ける日を待っていたんだよ、入学してからずっと😊

これまでの子リスを一緒に見て来たマンションの“母友”達も、特に「子リス君、今年は喋ったね!」などとは言わず、ごく普通にさらっと過ごしてくれました。
そして今年登校班の副班長になった子リスは、列の一番後ろについて、去年とは別人の明るい顔で(でも「普段通り」の雰囲気で)学校へ出発して行きました。

私は部屋に駆け戻りました。玄関で待ち構えていた夫に
「どうだった?」
と聞かれ、
「言った!ちゃんと言ったよ。『5年1組子リスです。よろしくおねがいします』って」
と報告し終わらないうちにぶわっと涙が溢れて来て、去年と同じぐらい泣いてしまいました。
5年生が始まりました!

そして、始業式から帰って来た子リスから、何とも嬉しいニュースがありました。4年生に続いて5年生も、O先生のクラスになったというのです。4年生の終わりごろからのよい流れが、このまま続いて欲しいと願っていたので、本当に有難いことでした。

ところであの自己紹介の日の朝、本人はどれぐらい緊張していたものだろうかと、最近になってから聞いてみました。すると、「今年からは自分で言っていいんだな、っていう感じ」
とフシギなことを言いました。「自分で言っていい」とはどういうことかと聞くと、

「自分は喋れないから、喋らない人」であると認識していたものが ⇒
「喋れるようになったから、喋っていい人」になった。
ということだと言います。
だから、あの始業式の日、最初に教室に入った時にも、「あ、近くの人と喋ってもいいんだな」と思ったのだそうです。

つくづく、自己認識とは良くも悪くもスゴイものだなあと思います。

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