6年生時代 その⑤ ふるさとへ

東日本大震災から5か月たった8月、私達家族と母は故郷である岩手県に帰省しました。
子リスにとっては6回目、ちびリスにとっては初めての岩手です。

帰省とはいつも、ほんわかとした温かいものであったのが、この時には、緊張と恐れでしかなかったことは言うまでもありません。
そして、この時子リスがどんな気持ちだったのか、ということについては、考える余裕もありませんでした。

小・中学校時代を過ごし、子供時代の思い出を全てあの地に置いてあった私と違って、子リスにとってはただの「母親の故郷」に過ぎないのではないかと、その頃までは思っていました。でも、もう町とは呼べない程に破壊された光景は、子供心にも大きな衝撃だったようです。

子リスの夏休みの日記にはこう書いてあります。

「被災地を見てきて、僕はとても不思議な感じがした。僕が買い物をした事のあるスーパーや、泊まった事のあるホテルもなくなって、母の住んでいた家の付近の建物も全て無くなっていた。知っている町の風景がなくなっていたので、とても悲しかった。一日で町がなくなってしまうということは、とても怖いと思った」

私の故郷はその後、だいぶ復興が進んで来てはいますが、私にとってはますます帰りにくい場所になっています。それは、あの津波の時に故郷にいなかったという、そしてその後も復興してゆく様子を目にして来なかった、という罪悪感に勝てない弱さのためです。

一方、子リスはとても、岩手に行きたがります。甲子園に出る岩手県代表の高校を見る時、テレビのニュースに故郷が写る時。私の母が話す岩手訛りを楽しんでいる時。日常の様々な場面で、子リスには私が想像していたよりも、岩手に対して深い思いがあるのだと気付かされます。

必ずまた、帰省できるようにしたいと思っています。
子リスやちびリスのためにも、私自身のためにもです。

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