中学時代 その② 中学生になっただけなのに [1年生]

子リスの通っていた小学校と中学校は、細い道を隔てて隣り合っています。だから通学路も、学校までかかる時間も、小学校の時と殆ど変わりません。同級生も、8割以上の子が顔見知りです。
だいたい、つい数週間前まではランドセルを背負って、黄色い通学帽をかぶって、隣の小学校の方に行っていたのです。制服を着て、ネクタイを締めて、中学生になったからと言って、人間が急に大きく変わったりするわけでなし・・・。そう思うところなのですが、何だか、急に何かがが変わってきました・・・。

まず、何と言っても違うのが、帰って来た時の「顔」です。

小学校時代は、「ただいま」とかわいく言って家に入ると、おやつを食べたりちびリスにちょっかいを出したりして、その後、さあボクの自由時間!というように、心の趣くままにあれこれ楽しんでいたものでした。

それが、入学式からまだ日も浅いというのに、「ただいま」の声からもう、すっかり別物になっていました。勿論、変声期にも入りつつあったので、実際変な声(ゴメン)ではあるのですが、それだけではなくて、こう、何というか、張りのない、憂鬱を含んだ声。

「学校どうだった?」と聞けば、
「まあ、ふつう。」
「『ふつう』とは?」
「特に何も…」
「疲れた?」
「だいじょうぶ」

…どうやら、「どうだった?」の質問に対しての、「楽しかった」に変わる受け答えは、
「ふつう」になったようです。

今から思えば、そして、自分の中学生時代を思い返せば、学校のことを「どうだった?」と聞かれたって、そうそう答える価値のある事なんてあるわけないよね、とわかりはするのですが、当時は、「かわいい子リスが変わっちゃった!」と内心悲しんでいたのでした。

しかし、その愛想のない子リスをそのまま放っておくと、私が夕飯の支度をしたりしているところへやって来て、壁にもたれながら、

「部活の見学が始まるんだよ~。3つぐらい見に行ってみようかな」
「理科の授業がけっこうおもしろいんだ」
「うちのクラスだけ、他のクラスと国語の先生が違うんだよね」
「ところで夕飯は何ですか?」

などと、突然喋り出します。
機嫌がよくなったのは嬉しいので、こちらも機嫌よく返事をします。台所での、何とも楽しい時間です。
なーんだ、変わってないじゃない。よかった。きっと何か、学校で気になることがあったのね。でも大したことなさそうだから、よかった。

ところがまた次の日、あの顔で帰ってきます。
何なのかしら?と思っていましたが、そのうちに、気付きました。

どうやら子リスは、思いっきり「中学校」を引きずって帰ってくるのだな…と。だから学校から帰ってきたばかりの時は、その重さでいっぱいいっぱい、オフクロの言うことなんて入って来やしない。でも、だいたい1~2時間すると、その「中学校モード」が外れて、素の子リスに戻り、急に話したいことが浮かんでくる…というシステムになっているようでした。

ははぁ、2時間待てばよいのだな。無駄な争いもしたくないし、こちらも忙しいから、少し待つことにしよう。それを覚えてから、だいぶラクになったのでした。

私にも、中学校に入った途端に、急に世の中がオモシロクなくなった記憶があります。
思春期、というヤツです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA