4年生時代 その⑭ 運動会の朝

今年もやってきました、運動会!

子リスにとって運動会の目玉がダンスになったのは、幼稚園年長の時だったと思います。今年もやはり、“家でする運動会の話”=“ダンスの話” なのでした。

今年は、「らっしょいわっしょい江戸の華」というお祭り風の曲に乗って、鳴子を打ち鳴らしながら踊るという、楽しそうなダンスでした。毎日家で、歌いながら練習している子リスの声には張りがあって、やっぱり踊るのが相当好きなことが窺えます。

さて当日の朝。私はお弁当を作らなければならないので、5時起きです。6時になったら子リスを起こして…と思っていたのですが、寝ている子リスがただならぬ雰囲気…。「うーん」あれ…?これはもしかして…

ジコチューならぬ、ジカチュー(我が家ではそう呼んでいました)、つまり自家中毒。正体は未だに良くわかりませんが、酷い頭痛が起こり、身体全体が怠く、吐き気がして力が入らない、という状態です。この頃から子リスは、何か行事や楽しみなことがある日の朝、時々この症状が出るようになっていました。

その行事は、楽しみにしていることであったり、逆に気が重いことであったりしましたが、とにかく緊張した時だったのだろうと思います。

頭が酷く痛むので、子リスはベッドで頭を押さえ、仰向けで左右に転げたり、反対に頭をベッドに付けて突っ伏したりしています。痛み止めも飲み、冷やすと多少和らぐらしいので、氷嚢やアイス枕で冷やそうとしますが、頭痛持ちの人ならお分かりの通り、もうここまで痛くなると、薬も冷却も、効果が無いに等しいのです。

この様子では、運動会に出るのは無理と考えざるを得ないけれど、はっきり言うのはかわいそうで、「…これはもう、学校に電話しないとね…」と言うと、子リスは唸りながら、

「…だいじょうぶ。」と言うのです。
「だいじょうぶって…。その体調で、暑い中で、大変な事になったらどうするの!」
心配と「どうしてこんな時に…」という気持ちで、ついつい私の語気が強くなります。

子リスは、顔は真っ青だし、立ち上がることもできません。それなのに、大丈夫、行く。と繰り返します。私は、出来上がってしまったお弁当を包むべきかどうか迷いながら、「だって暑くなるしね・・・?」と夫に水を向けると、夫も子リスに、
「行くったっておまえ、その状態じゃ無理だろ。」
「・・・・・」
子リスは黙っています。

夫:「それとも、取敢えず行くだけ行ってみるか?それでだめだったら帰って来る。」
私:「だって行けないでしょ、立てないんだから。」
夫:「だからもう少し休んでからさ。学校に連絡して、行けるようになったら行きます、って言うか。」
私:「もう先生もみんな校庭に出ちゃってるよ…」

夫婦で言い合っていると、
子リスは突然、もこもこっと動くと立ち上がり、トイレに向かいました。どうやら、自家中毒の“山”が来て、吐いているようです。

私が、「こりゃだめだ…。」と思いながら、慰めの言葉を用意して待っていると、しばらくして戻って来た子リスは、「少しよくなった。」と言います。確かに、顔色がかすかに、人間らしい色になっています。まだかなり白いけれど、さっきまでの「どっぷり具合悪い」様子とは違って、少しだけすっきりして、何というか、毒が抜けたような感じに見えます。何より、しっかり立っています。

そして子リスは、きっぱりと「行く。」と言いました。

取敢えず、少し甘くした常温の紅茶を飲ませてみます。(これは、何度か登場しているマリーさんによる、「自家中毒がおさまったらどうするか」の教えに基づくものです)
その後、少しだけパンを食べた子リスは、何だか見る見るうちにマトモな様子になってきました。時計を見ると、ちょうど開会式が始まった頃です。

夫が、「よし、行くぞ」と言い、子リスはそそくさと支度をはじめました。
そして私は、出掛けていった2人をベランダから見送りながら、
「はぁ~」とため息です。大丈夫かなあ。なんでいつも、何かしらあるのかなあ。
それにしても大丈夫かなあ。

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