6年生時代 その④ 喋れるようになった後は

え?聞き間違いかと思ってもう一度、

「なに?『喋れるようになった事で学校生活が楽しくなった』と思ったことが・・・?」

「ない。」

「ない!?」

私はしばし絶句。気を取り直して、「楽しくなかったの?」と聞いてみます。すると、

「とにかく、いわゆる学校が“楽しい”と感じたピークは3年生。喋れなくても気にしないで、ただただ楽しく遊んでた。それから4年生で、「これはマズイぞ」と気付いて、5年生からはだいぶ喋ってたけど、学校が楽しいとは思わなくなったんだよね。」

…何ということでしょう…。あんなに苦労して喋れるようになったのに。第一、あんなに骨を折って下さったO先生がこれを聞いたら、どんなにがっかりするか…

すると子リスは、
「いや、それはね。」と、説明を始めました。

「だって、1年生になった初日から、『あ〜、学校楽しい〜!』って思わないでしょ。それと同じ。
学校で喋るっていう事に関しては1年生なんだから。
最初から100%『楽しい〜!』とはならないよね。5、6年生はその時期だったっていうこと」

なるほど。考えてみればそうだよね…。

「“喋り始めたけど楽しくない期間”というのは絶対にあるから、あるんだったらそれは早く来た方がいい。中には、最初から楽しくやれる人もいるんだろうけど、自分はそうじゃなかった。4年生まで全然喋れないようなヤツが、そんなに急にうまくできるわけないよね」

そうだね…。

「もしあそこでO先生に助けてもらわなかったら、喋り始めるのがもっともっと遅くなってたと思う。そうすると、“喋り始め1年生“の時期がどんどん先送りになっていくわけだから、それとセットの”楽しくない時期“も一緒に先送りされて行くよね。この、『喋り始める + 楽しくない時期』のセットは、絶対に越えなければならない山で、それをあの時期に越えさせてもらったんだよ。」

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喋り始めることには、「楽しくない時期」というものがもれなく付いてくる。あの頃子リスは、そんな「同時に取らなければならない必須科目」の様な時間を過ごしていた、ということか…。

私は、子リスがそれを私に言わずに(おそらく当時は自分でもはっきり意識できてはいなかったと思いますが)学校での日々を送っていたのだということに、少なからず衝撃を受けました。
そして同時に、子リスが今はもう、そんな風にあの頃を振り返ることができるようになったということに、誇らしさと申し訳なさの混ざった気持ちが湧いてくるのです。

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