6年生時代 その⑦ ゲームコーナー

学校で声が出るようになったから、もう安心。学校できっと楽しく友達とお喋りしているだろう!
…と思うほど、私は楽観的なタイプではありませんでした。

4年生まで学校で喋ることなく過ごして来た子リスが、声が出るようになったからと言ってすぐ、迷うことなく、上手に、友達と話せるものなんだろうか?
そんな不安は、当然ありました。

でも、学校から帰るとすぐに遊びに出かけて行くということは、遊ぶ約束ができる友達がいるということだし、遊んで帰って来れば「楽しかった」(←またしてもこの“合言葉”)と言うし…、それに騙され(???)、「どうやら大丈夫らしい」というところで「一応」納得していました。

そしておそらく、子リス本人も、「喋れるようになったけど、楽しくはならないものだなあ」などと、自分の状態を分析するようなことはまだ出来る段階ではなかったと思います。

そんな、何となくもやっとした中で過ごしていた6年生時代。夏ごろから、子リスは同じクラスの、数人の決まった子達と出かけることが増えて来ました。
公園が殆どでしたが、歩いて10分ぐらいのところにあるスーパーの上に入っている、ゲームコーナーに行ったこともありました。

ゲーム代としてお小遣いを持たせました。財布に入れたのはほんの数百円でしたが、それでも「お金を持って遊びに行く」なんて初めての申し出だったので、これは行かせていいものだろうか???と、多少悩みました。

実は、今の私なら許さないのではないかと思っています。お金を持たずに遊べる場所は沢山あるし、そもそも小学生がお金を持って出かける必要なんてない。お祭りなどの特別な機会なら話は別だけれど、日常的に友達と遊びに出かける場所として、ゲームコーナーというのは、相応しくない。
…というのが、私の(夫はそこまで厳しく考えてはいないと思いますが)個人的な考えです。

でも当時、「ゲームコーナーにはあまり行かせたくない」という考えを、「せっかく喋れるようになって、新しい友達もできたのだから、余程のことでない限りはやらせてあげたい」、という気持ちが上回り、何かに急かされるように許してしまったのを覚えています。

幸い、お金を持って出かけたことによるトラブルなどはなく、その後ゲームコーナーに行くことが習慣化したわけでもなかったので、私の心配はそこで終わったのでしたが…
できることが増えることは、それだけ親にとっての心配の種や、実際の危険も増えるということなんだ…と感じ始めた時ではありました。

そしてもう1つ思い出すのは、どことなく子リスが変わり始めたような気がしたことです。思春期に入りかけた時期なのだから、当たり前と言えば当たり前のことなのですが、何だか子リスの顔つきや雰囲気が前とは違って来たような…。
子リスは楽しんでるのかな。ちょっと焦っていないかな。友達のペースに、必死について行こうとして苦しんではいないんだろうか。「楽しかった」って言うけど。

「あの頃の自分は好きじゃない」
と、子リス本人は言います。「なんかイヤなヤツだった。」のだそうです。
でも実際は本人が言うほど悪い変わり方をしたわけではなくて、私にとっては相変わらずかわいくて優しくて、面白い子リスだったことは間違いないのです。でもどこかに、何かを忘れているような、何かを急ぐあまり子リスらしさが隠れてしまったような、何ともいえない寂しさと不安がありました。

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