中学時代 その⑨ 僕には見えてません [1年生]

オモシロクあろうがなかろうが、参加して人並みでいようとしてしまうのが、中学校の部活というものかもしれません。勿論、生き生きと活動している生徒たちも沢山いますが、そうでない部類の子も、相当数いることは確かです。(何を隠そう、私は後者の筆頭でした)
辞めると言う選択肢があってもいいのに。と、今でも私は思っていますが、中学生活の不文律みたいなもので、そう簡単にいかないことが多いのが困ったところです。

夏休みが明けると、各部活は新人戦やその他の大会に向けて忙しくなります。そんなに部活に気合いが入っていない子リスも、オープン戦というものに出してもらえることになりました。
同じ部活のお母さんに「見に行くでしょ?」と聞かれましたが、どういうものなんだろうと思ったので、子リスに、「もし見に行っていいなら行こうかな」と言うと、
「あ、来るの?」という返事。
決して嬉しそうではないけれど、来ないでくれとも言いません。
大会が行われるのは、家から歩いて5分のところにある市立体育館。遠いわけじゃなし、行ってみるか!

…ということで、仕事をやりくりした夫とちびリスと、3人で出かけ、10:00時過ぎに会場に着きました。子リスの試合は10:30頃からだと言っていたので、十分間に合うはず。
応援席に向かって歩いていると、向こうの方から、子リスらしき中学生が友達と2人で歩いて来ます。
あ、子リスだ。これから試合に向かうのかな?

しかし子リスは、近くに来ても全く目を合わせません。こちらが見えていないことはあり得ない距離と角度にも拘らず、そのまますれ違って行こうとしています。

私は慌てて、「子リス!試合は?」と聞きました。

すると子リスは、歩きながら、真っすぐ進行方向を向いたままで
「終わった」
と言うのです。

「えっ?終わった?後はどうなるの?」
と、子リスの背中に向かって聞くと、振り返りもせずに、そして面倒くさそうに、

「わかんない」
と言い、そのままズンズン歩いて行ってしまいました。

目を逸らす、なんて言うもんじゃありません。
僕の目にあなたは見えていません。あなたは柱。というような態度。

…フツフツ… 私のハラワタの煮えくりかえる音です。
その頃の子リスの態度の悪さがいい加減積み重なっていたものだから、ここで私の怒りは頂点に達し、ついに噴火しました。

「ナニ?終わった?わかんない?時間が変更になったならなったでしょうがない。とにかく何なんだ、あの態度は!?」

夫は…実はうちの夫は、そういう、連絡や報告不足、さらには失礼な態度などには本当に厳しい人です。そしてあの頃はまだ結構気も短く、大抵子リスが何か“しでかした”時に怒るのは夫の仕事でした。しかしこの時ばかりは、夫は何も言いませんでした。

「アイツ、帰ったらタダじゃおかない!今日と言う今日はゼッタイ許さない!」

と言う私の剣幕を見て、2人で怒るのはよくないと思ったのかもしれません。

その日子リスが帰った後に、(予告通り)私が、コッテリ、ギッチリ、子リスを”絞った”ことは言うまでもありません。
お父さんは仕事をやりくりして行ったんだよ。行くの知ってたよね?時間が変わったのなら、そういえばいいでしょ。あの、人を人とも思っていないようなあの態度は何!?友達といる時に家族と会うのが気まずい気持はわかる。でも、親に対してだって失礼なことをしてもいい、ということにはならないんだよ!!

ここまでの文を読んだ子リスが、
「『あ、来るの?』っていうのはね、実はホントーーに来て欲しくなかったんだ」
と言っています。

「あー、なるほど。でも、『来ないでよ』って言うような文化がなかったからねえ、家の中に。子リスもそういうの言い慣れてなかったしね」

と言うと、「そうそう」と笑っていました。
更に、実はあの後もう1試合あったのだそうです。でも、ゼッタイ見て欲しくなかったのだとか。

来ないでくれ、と言うことも出来ないで、大変だったようです。

“家での姿(ひとつの真の姿)”を知る家族と、“学校の世界”を上手に切り替えることも、融合させることも出来ない。家族に冷たい態度を取るしかできない中学生男子とは、つくづく不器用なイキモノだなあと思います。

ふん、という態度を取ることで、もう子供じゃなくなったと示せる…と思っているところが、コドモだよねえ、と子リスが言います。
確かに、友達の前で自分の親と普通に話せるようになったら、それは思春期を抜けたサインの1つに違いありません。

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