中学時代 その⑰ 友達 [3年生]

私達の住んでいる町では、毎年大規模な夏祭りが開催され、鳴子の踊りや出店、地方物産展などで賑わいます。夜には花火大会もあって、市外からも大勢人がやって来る、なかなかのお祭りです。子リスは小さい頃から、毎年この日を楽しみにしていました。この夏祭りは、子リスにとって一年の中でも特に重要なイベントのひとつで、それは子リスが例の「一日の時間割」を作っていたことからもわかるのでした。

大きくなってきて、流石に時間割は作らなくなっても、やっぱりその日は特別でした。家族でお祭りに出かけ、焼きそばやイカ焼きなどを買って、帰ったら急いでお風呂に入ります。そして暗くなったらベランダに出て、買ってきたものを食べながら花火を見る。これが我が家の伝統となっていました。

子リスはこの年、
「お祭りも花火も、友達と見たいんだけど、いいかな?」
と言いました。

小学校後半からは友達とも喋れるようになってはいたものの、すぐに上手に友達付き合いが出来ていた訳ではなく、あれこれ問題もありました。そして中学校に入ってからも、友達付き合いを楽しむまでに至っているようには見えませんでした。

それが友達とお祭りに行く。花火も見てから帰って来る。

そうか、今年のお祭りは友達と行くんだ…花火も見るんだ…
よかったなあ…
特別な日を家族で過ごすよりも友達を選んだことに、私は1%の寂しさと99%の誇らしさを感じながら、子リスを送り出しました。

この前後から、時々何人かの友達が家に来るようになっていました。
秋に控えている修学旅行で同じ班になるということで、子リスの部屋で旅行の相談をしたり、相談はそっちのけで遊んだりしているようでしたが、時々お邪魔するちびリスのこともかわいがってくれる、優しい子達でした。

当時はよく知りませんでしたが(何しろあの頃は、学校のこと…殊に人間関係についてなんかはゼッタイに、家で話してはくれなかったので…)、この年のクラスはとても楽しかったのだそうです。先生も穏やかな優しい先生で、クラス全体がとても和やかな雰囲気だったそうです。部活が終わっただけではなく、その前の天罰(?)のお陰だけでもなく、子リスの顔つきや態度が柔らかくなったのには、そんな理由もあったのかもしれないなあ、と後から思ったのでした。子リスが、中学生活最後の年を楽しく心穏やかに過ごすことが出来たことは、本当に有難いことでした。

穏やかで平和なクラス、穏やかではあるけれど何だかやる気のないクラス、特に問題は無いけれども一体感のないクラス、活気があって楽しいクラス、活気がありすぎて紛争が絶えないクラス…と、クラスの雰囲気は様々で、どんなクラスになるかは始まって見なければわかりません。そして、どのクラスに入るかはまさに巡り合わせで、それぞれの年に楽しい思いをしたり、辛い思いをしたり、悩んだり喜んだり、あれこれあって学びながら、長い学校生活を過ごし、成長していくのだなあ、みんな。…そんな思いを、自分の事、友達の事、子リスやちびリスのことを考えながら、改めて噛みしめました。

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