4年生時代 その㉔ ちびリス登場!

持久走記録会の日、生まれそうな気配を見せて「やっぱりやめた…」と大人しくなったちびリスでしたが、それから4日後の朝、どうやらついに意を決したらしく、「そろそろいきます」との知らせがお腹から届きました。時間を計ってみると、これは間違いなく、陣痛の始まりです。

病院に持って行く荷物を確認したり、昼食の準備をしたり、その辺を片付けたりしている合間にやってくるお腹の張りを記録したのは、子リスでした。
「(張りが)来た…」と私が言うと、子リスはパッと時計を見て、時刻を紙に書き込みます。
こんな時、子リスの「何でも記録する癖」はとても頼もしいのでした。(その実際の表が、今も手許に取ってあります。)

陣痛はゆっくりゆっくり進みました。夕飯の時間を過ぎて、お風呂に入っても、なかなか本格化しません。落ち着かないまま、もう子リスは寝る時間になりました。

「病院に行くことになったら、すーぐ起こしてよ。」
「わかったわかった」

ということで、子リスはベッドに入りました。

夜中の3時。私は痛みで目が覚めました。もう、だいぶ痛くなっています。起きて、次の痛みが来るまでの時間を計るときっかり15分。病院に電話すると、「経産婦さんですから、お産が速く進むと思いますので、すぐいらしてください。」と言われ、私は夫と子リスを起こしに行きました。

「子リス、病院に」…言い終わらないうちに子リスは
「ハイッ!」と飛び起き、ベッドに立ち上がると、キビキビと降りて来て身支度を始めました。
いつも夜中に動かそうなどとしようものなら、
「うーん…」と、甚だメイワクそうに顔をしかめ、全然起きないのに。

12時過ぎまで仕事をしていた夫も、「あ、来た?」と起きて、3人で車に乗り、病院に向かいました。
病院到着が3時半。この感じだと、朝までには生まれているだろう、ということで、夫と子リスは待合室へ、私は陣痛室へ。

ところが、順調に来ていた陣痛が、8時を過ぎた辺りからまたしても段々遠ざかり、ついにはぱたっと止まってしまったのです。
あれ~?また延期したのかなあ…と思っていると、先生と看護師さんがやってきて、腹部のエコーを見ながら何やら相談しています。

「ね、先生。」
「そうだね。一周はしてる感じだよね。」

一周?
どうやら、へその緒がちびリスの体にぐるっと巻き付いているようなのです。
私の体の向きによっては、締め付けられるらしく、ちびリスの心音が弱くなっていることもわかりました。

「もう少し様子を見て、このままのようなら帝王切開ということも考えましょう。」

帝王切開…。散々痛かった後に切るのも残念だけど、この際もう何でもいいから、無事に出して下さい、という気持ちでした。
それから、眠気に襲われたり、重苦しさを感じたりしながら、そしてずっとモニターから聞こえるちびリスの心音を心配しながら随分長い時間を過ごし、いったいどうなるんだろうと思った頃、また急に、今度はいきなり強烈な陣痛がやって来ました。

助産師さんを呼ぶと、診察した彼女は、
「オッケー、全開。」
とニッコリ。えっ?へその緒は?と聞くと、
「ほどけたみたいです。赤ちゃんは、自分が安全に生まれられるタイミングを見て出て来るんですよ。すごいんですよ。さ、分娩台に行きましょうか」
と私を起こしてくれました。

実は彼女は、私が悪阻で入院していた時からお世話になっていた助産師さんでした。トイレで貧血を起こして立てなくなってしまった時、助けに来てくれて、その力強い腕でエイッと私を引き上げてくれた人でした。この人に取り上げてもらいたいなあ、と密かに思ったのでしたが、まさかそれが叶うとは…!

分娩台に移ってからはもう、子リスを産んだ時の記憶が次々に蘇ってくる中で、お産はどんどん進んで行きました。
破水があって、”いきみ”の許可が出て…

「ふぎゃあ、ふあ、ふあ…」と、この世に出て来たちびリスは泣きました。やったあ、生まれた…👶
2009年12月6日、午後12時38分。

産声が、赤ちゃんによってだいぶ違うということを知りました。
子リスは、生まれるや否や「おぎゃー!おぎゃー!」と、とても力強く泣きました。その声は、夫が待っていた廊下まで響いたそうで、「生まれましたよ!生まれたってばーっ!」と皆に知らしめているような、リッパな産声でした。一方ちびリスのはまあなんとも柔らかい…というか情けない、「つかれちゃったの…なんとかしてくだしゃい…」という感じの泣き声でした。

私の左胸の上に乗せてもらったちびリスは、本当に小さくて軽くて、まだ体と外界の境界線もあやふやなほど儚い感触で、そして愛おしい生き物でした。
子リスの誕生時と比べると、だいぶ小さく見えました。予定日より3週間ほど早く生まれたのは、助産婦さんの言う通り、絡まってしまったへその緒を安全に潜り抜けられるタイミングで出て来たのかもしれません。
長い時間、お腹の中で、体に巻き付く紐と格闘して出て来たのかしら、と思うと、「よく頑張ったね」と声を掛けたい気持ちでした。

おめでとう、ちびリス。これからよろしくね。
そして、おめでとう、子リス。ついにお兄ちゃん!

ただ1つ気の毒だったのは、「ゼッタイに分娩の立ち合いはしない」という主義を貫くつもりでいた夫が、へその緒事件で、危険かもしれないという状態に負け、そのまま分娩に立ち会わされてしまったことでした。でもお陰で、生まれた瞬間のちびリスを見ることが出来たのですから、納得していることと思います…。

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